多汗症は自律神経の乱れや、他の病気の症状としてあらわれることが原因とされています。

そのため、根本的な原因を解決しない限りは治療できません。 しかし漢方やツボの刺激によって症状を改善することで、症状の改善が根本的な原因の解決につながる可能性があります。

この記事では手術などではなく、漢方やツボによる多汗症の改善について解説します。

多汗症に効果のある漢方

漢方には汗腺のはたらきを整えたり、神経系の乱れを調整する効果があるものがあります。 多汗症の原因が自律神経の乱れであれば、漢方によって自律神経の乱れを整えることで効果が見込めますし、 漢方が直接的に汗腺のはたらきを整えることで症状が改善することも考えられます。

漢方は生薬の配合によって作られており、生薬ごとにそれぞれ効果は異なります。 発生している症状に応じて適したものを医師や薬剤師と相談した上で服用してください。

順成湯じゅんせいとう

建林松鶴堂が作った多汗症、遺尿症のための漢方です。 7歳未満の方は使えません。

もともとは疲労感の改善や虚弱体質、頻尿、冷えなどに効果があるものですが、 多汗症に対する効果・効能も考えられて作られており、神経系の改善という意味で効果が期待できます。

本品1包を煎じる容器(鉄製のものは使用しない)に入れ、水550mL(約3合)を加えて火に掛け、沸騰したら弱火にし、ふきこぼれないように気をつけながら約半量となるまで煎じ、成人1日量とし食間に服用します。

順成湯 | 独立行政法人医薬品医療機器総合機構

皮膚への副作用として発疹・発赤、かゆみ、消火器系への副作用として吐き気、食欲不振などがみられることがあります。

柴胡加竜骨牡蛎湯さいこかりゅうこつぼれいとう

神経の興奮を抑える効果があり、高血圧、多汗症、パニック障害、うつ病に有効だとされている漢方です。 精神的な不調の改善も期待でき、それによる動悸などの改善も見込めます。

効能に次のような注意書きがあるため、体力に自信がない方は使用を避けたほうがいいでしょう。

比較的体力があり、心悸亢進、不眠、いらだち等の精神症状のあるものの次の諸症。 高血圧症、動脈硬化症、慢性腎臓病、神経衰弱症、神経性心悸亢進症、てんかん、ヒステリー、小児夜啼症、陰萎。

消火器系への副作用として位の不快感、食欲不振、腹痛、下痢など、皮膚への副作用として、発疹、かゆみなどがおこる場合があります。

防已黄耆湯ぼういおうぎとう

柴胡加竜骨牡蛎湯さいこかりゅうこつぼれいとう に対して、体力のない方は防已黄耆湯ぼういおうぎとう であれば服薬できます。

防已黄耆湯ぼういおうぎとう は色白で筋肉が柔らかく水太りの人に向くと謳っており、体の水分循環を良くすることで疲労感の改善や鎮痛効果が期待できます。 余分な水分を適切に排出する効果が見込めるため、多汗症の改善も期待できます。

漢方薬は食前もしくは食間(空腹時)に飲みます。顆粒は、お湯で溶かしてから、ゆったりした気分で飲むとよいでしょう。むかつく時は、水で飲んでもかまいません。

防已黄耆湯 | おくすり110番

副作用としてむくみや血圧の上昇、食欲不振や吐き気がみられることがあります。

玉屏風散ぎょくへいふうさん

漢方の効能としてよく語られる言葉に衛気えき というものがあります。 これは免疫とほぼおなじ意味を持っており、玉屏風散ぎょくへいふうさん衛気えき が弱くなった時に効果的な漢方です。

玉屏風散ぎょくへいふうさん はもともと、風邪を引きやすい状況や長引いてしまう状況を改善するための漢方です。 しかし汗腺の開閉を整えて異常な発汗を抑える効果があるため、多汗症にも効果が見込めます。

2味の補気薬と1味の袪風薬(風邪を追い払う)で構成され、主薬の黄耆と白朮で、肺と脾の気を補い、増強する。とくに肺気が充実され、体表部を固摂する機能が回復すると、汗腺の開閉も正常になり、異常な汗は止まる。

小太郎漢方製薬|漢方情報|漢方処方解説

玉屏風散ぎょくへいふうさん は副作用が少ないことが特徴で、まれに肌のアレルギー反応や発疹、かゆみが見られることがあります。

黄耆建中湯おうぎけんちゅうとう

体が未成熟な子供にも使える漢方です。 疲労がたまっていたり、衛気えき が弱くなっていしまっている状態の体に対し、 胃腸や内臓のはたらきを改善して栄養状態が適切な状態になるよう調整をしてくれる漢方です

組成に含まれる黄耆おうぎ には発汗を正常に戻す作用があるため、多汗症の改善が期待できます。

消化器の気を補う甘草・膠飴・大棗に、体を温める桂皮・生姜、補血をして鎮痙(痙攣を止める)する芍薬で構成された小建中湯に、表の気を補う黄耆が加わっているので、皮膚のしまりをよくして汗を止め、肉芽の発生を促進し、栄養を与える。

小太郎漢方製薬|漢方情報|漢方処方解説

副作用として、食欲不振や吐き気などの消化器系の症状と、発疹やかゆみなど肌への症状がみられることがあります。

柴胡桂枝乾姜湯さいこけいしかんきょうとう

柴胡桂枝乾姜湯さいこけいしかんきょうとう はこれまで紹介した漢方と異なり、 心と体の両方に効果があります。

肉体的な効果として、熱や炎症の改善、蓄積した疲労の回復 などがあります。 精神的な面では、神経の疲れやそれによる不眠症、動悸 などに対して効果があります。

多汗症は自律神経の乱れから起こる場合があるため、自律神経の乱れを整えることによる多汗症の改善が期待できます。

副作用として、食欲不振や吐き気などの消化器系の症状と、発疹やかゆみなど肌への症状がみられることがあります。 また、肺機能の異常が見られる場合があります。

花月かげつ

花月かげつ は主に精神面での効果があります。 例えば、緊張感や興奮、理由のない苛立ちなど、またそれによる頭痛や疲労感を改善する効果があります。

柴胡桂枝乾姜湯さいこけいしかんきょうとう と同様の理由で、自律神経の乱れを整えることによる多汗症の改善が期待できます。

発疹やかゆみ、吐き気や嘔吐などの副作用がみられることがあります。

加味逍遥散かみしょうようさん

漢方では血虚けっきょ という言葉を使うことがあります。 これは血流の異常のことで、加味逍遥散かみしょうようさん はこういった血流を正常に整える効果があります。

また、血流を整えることによるホルモンバランスの調整や、頭痛、肩こり、不眠症や神経の乱れの改善が期待できます。

手足の冷え、のぼせ、生理不順や生理痛、頭痛、肩こり、けん怠感、不眠、神経症などに適応します。また、そのような症状をともなう更年期障害や自律神経失調、月経前緊張症などにも好適です。

加味逍遙散 | おくすり110番

発疹やかゆみ、吐き気や嘔吐などの副作用がみられることがあります。

経穴を刺激することによる多汗症の改善

ツボというのは、医学的に言う経穴というものを指します。 これは経絡医学という1つの学問になるほど大きなもので、体の部位に対応する体表の特定位置を刺激することで、対象部位の症状改善をはかる ものです。

ツボの中には神経の乱れを整えるものが多くあり、これを刺激することで多汗症の症状改善が期待できます。

ですが、日常的なストレスなどによって自律神経が乱れている場合は、根本的な原因の改善をしなければなりません。 ツボの刺激による改善をしながらも、根本的な原因を探すことをおすすめします。

後谿こうけい

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手を握った時に、小指の下にできるシワの位置にあるのが後谿こうけい です。 ヒステリーや癇癪、精神疾患に効果がある ため、精神的な面での調整によって自律神経のバランスを整える効果が期待できます。

後谿こうけい は風邪や頭痛、目の疲れなどの症状にも効果があります。

陰郄いんげき

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手首の内側の小指側にあるツボが陰郄いんげき です。 このツボは心臓に発生している発作などに効果があるとされており、神経を正常な状態に戻す効果もあるそうです。

心筋梗塞、狭心症など、心臓にまつわるものから、神経衰弱や寝汗に対する効果も見込めます。

合谷ごうこく

漢方やツボの刺激による多汗症の改善 /images/ins-goukoku.jpg

合谷ごうこく は手の甲にあるツボで、後谿こうけい と同様、ヒステリーや癲癇に効果があるとされています。 合谷ごうこく は大腸の症状に対応するツボ で、人体の幅広い範囲に効果があります。

白内障などの目の疾患から、高血圧などの血流の疾患、頭痛や脳卒中などの脳の疾患や神経の麻痺などを改善することができます。

屋翳おくえい

漢方やツボの刺激による多汗症の改善 /images/ins-okuei.jpg

これまでに紹介したツボと違い、屋翳おくえい は手ではなく鎖骨の下辺りにあります。 具体的には第2肋骨と第3肋骨の間である第2肋間にあり、頻脈や不整脈にも効果があるとされています。

屋翳おくえい半側発汗はんそくはっかん による発汗抑制が期待できるため、多汗症にも有効です。

大包だいほう

漢方やツボの刺激による多汗症の改善 /images/ins-daihou.jpg

大包だいほう も手ではなく、脇の下辺りにあります。 第6肋間にあり、内臓のはたらきを正常に戻すことで栄養状態を整える効果があります。

屋翳おくえい と同様、半側発汗はんそくはっかん という現象を利用した発汗の抑制が期待できます。

半側発汗はんそくはっかん を利用した多汗症の改善

反射というのは神経を介して発生する自分の意志とは関係のない事象のことです。 「癖」や「条件反射」と呼ばれるものはこれに含まれません。

反射は大きく分けて、体が物理的に動く体性反射と、内臓での成分分泌などを起こす内臓反射に分類でき、 発汗に作用する半側発汗はんそくはっかん という反射を利用することで、多汗症の一時的な改善が期待できます。

皮膚圧発汗反射、半側発汗はんそくはっかん による発汗の抑制

皮膚圧発汗反射という体性反射に分類される反射があります。

これは皮膚を圧迫することで発汗に影響する反射のことで、わかりやすい例が寝汗です。 人間は寝ている時も発汗していますが、仰向けで寝ている時は背中の発汗が少なく、胸部での発汗が増えます。

これは皮膚圧発汗反射の一種である半側発汗はんそくはっかん という反射で、圧迫されている部分の発汗が抑えられ、反対側の発汗が増えるという特性を持ちます。

半側発汗(はんそくはっかん、英: hemihidrotic reflex)とは、反射の一種で、人体の左右上下のいずれかを圧迫すると、半側で発汗し、その反対側の発汗を抑えるいう皮膚圧発汗反射の現象。

半側発汗 - Wikipedia

芸者の高帯

漢方やツボの刺激による多汗症の改善 /images/ins-hemihidrotic-reflex.jpg
http://kogetora.com/post-1052

これを利用したのが舞妓さんなどの芸者の高帯と言われているものです。

舞妓さんは顔にしっかりと化粧をするため、汗をかいてしまうと化粧が崩れてしまいます。 そのため顔や頭の発汗を防ぐ必要があり、半側発汗はんそくはっかん を利用した発汗抑制をしています。

それが芸者の高帯と言われるもので、胸部の上部に帯を巻くことで皮膚を圧迫し、半側発汗はんそくはっかん によって上半身の発汗を抑える手法です。 これにより下半身の発汗が増えますが、顔や頭は発汗が抑えられ、化粧が崩れる心配がなくなります。

芸者の高帯は歴史的な実績もあり、同時に屋翳おくえい大包だいほう を刺激することによる発汗抑制の効果が見込めます。 現在では多汗症用の帯も市販されているようです。